第22章 話法(直接話法と間接話法)と時制の一致

英語の構文と特徴

第22章 話法(直接話法と間接話法)と時制の一致

ある人の発言を他の人にそのまま伝える言い方が「直接話法」、中継ぎする人の立場から言い直して伝えるのが「間接話法」です。第22章では、話法の理解に欠かせない時制の一致について学んだのちに、間接話法の作り方や注意点などについて概要を見ていきましょう。

ビートルズなどの洋楽歌詞に特に興味がない方は、下記の引用部分を飛び越えて文法のセクションへ飛ぶこともできます。↓

ビートルズの曲に出てくる間接話法

Get Back Jo Jo was a man who thought he was a loner(ジョジョは自分を孤独な男と思っていた)
Hold Me Tight You don’t know what it means to hold you tight(君を強く抱きしめることは何を意味するのか君は知らない)
I Should Have
Known Better
You’re gonna say you love me too(君も愛していると答えてくれる)
I’ll Follow The
Sun
One day you’ll look to see I’ve gone(ある日君は僕がいなくなったことに気づくだろう)


Some day You’ll know I was the one(いつの日か君は僕の大切さに気づくだろう)
Baby You’re A
Rich Man
Now that you know who you are(君は君が誰かを知った今)
She Loves You She says she loves you(彼女は君を愛していると言っている)
Oh! Darling When you told me you didn’t need me anymore(君がもう僕のことを必要ないと告げた時)
Anna You say he loves you more than me(君は彼が僕よりも君を愛しているという)

ビートルズの曲に出てくる直接話法

Please Please Me Last night I said these words to my girl. “I know you never even try, girl.”(昨夜、あの娘にこう言った。「君は試そうともしないんだね」)
Drive My Car She said, “Baby, can’t yous see?”(彼女は言った「ベイビー、わからないの?」)
Ob-la-di, Ob-la-da Desmond says to Molly, “Girl, I like your face”(デズモンドはモーリーに言う「ガール、僕は君の顔が好きだ」
ちなみにこの曲では後半の方でデズモンドはモーリーが入れ替わっています。ポールが間違って歌ってしまったようです)
Come Together He say, “I know you, you know me”(彼は言う「俺は君を知っている。君は僕を知っている」)
Come Together He say, “One and one and one is three”(彼は言う「1足す1足す1は3」)
Rocky Raccoon He said, “Danny boy, this is a showdown”(彼は言った「ダニーボーイ、決闘だ」)

ビートルズの曲に出てくる時制の一致

Get Back But he knew it couldn’t last(しかし彼はそれがずっと続くとは思っていなかった)
Get Back Sweet Loretta Martin thought she was a woman(かわいいロレッタ・マーティンは自分のことを女だと思っていた)
Oh! Darling When you told me you didn’t need me anymore(君がもう僕のことを必要ないと告げた時)

ビートルズの曲に出てくる時制の一致による副詞(句)の変化

The Night Before Treat me like you did the night before(前夜に君が僕にしてくれたように扱ってくれ)

22-1. 時制の一致

22-1-1. 時制の一致とは

文を過去形の動詞で始めたら、その動詞の影響の及ぶ範囲内は、過去または過去完了にしなければなりません。これを時制の一致といいます。

He says [that] he is happy.(彼は幸せだと言っている)

He said [that] he was happy.(彼は幸せだと言った)
I think [that] he will come.(彼は来るだろうと思う)

I thought [that] he would come.(彼は来るだろうと思った)
I think [that] she was a teacher.(私は彼女が先生だったと思う)

I thought [that] she had been a teacher.(私は彼女が先生だったと思った)
主節の時制 現在 ⇒ 過去
従属節の時制 未来→ 助動詞の過去形
現在→ 過去
現在進行形→ 過去進行形
現在完了→

現在完了→

過去→
過去完了
現在完了進行形→

過去進行形→

過去完了進行形→
過去進行形

注意)時制の一致が行われるのは、大体上の例のような名詞節(主としてthatが導く)に限ると考えてかまいません。つまり、次に示すように形容詞節や副詞節には適用されません。

He painted several great pictures which are in the museum.
(彼は(現在)美術館にある数点の傑作を描いた)<形容詞節>

日本語の発想と表現の違い

He said he was happy.=「彼は幸せだと言った」

上の文をwasがあるからといって「彼は幸せだったと言った」とすると、「幸せ」な時が彼の発言時以前のこととなって、英文の内容を正しく伝えません。「彼は幸せだったと言った」に対応する英文は、He said he had been happy.です。上の文は「言った」時が「幸せである」わけなので、「彼は幸せだと言った」としなければならない。

このように、時制の一致の英文を日本語に訳す時は注意が必要です。

22-1-2. 時制の一致が適用されない場合

1 一般的な真理を内容とする時は現在形のまま
The teacher taught us that the water boils at 100 ˚C.(水は100˚Cで沸騰すると先生は教えた)
We were taught that practice makes perfect.(「習うより慣れよ」と教わった)
2 現在も変わらない習慣的事実を言うときは現在形のまま

He said he takes a cold shower every morning.(彼は毎朝冷水シャワーを浴びると言った)
3 歴史的事実を内容とする時は過去形のまま
We learned that Columbus discovered America in 1492.(1492年にコロンブスがアメリカ大陸を発見したと習った)
4 仮定法の文を内容とする時は仮定法の時制のまま
He sighed that if he had enough funds, he would buy it.(十分資金があればそれを買うのに、と彼は嘆息混じりに言った)

助動詞も時制の一致で過去形になる

1 will→would, can→could, may→might

He answered that he could not play tennis.(彼はテニスが出来ないと答えた)
2 過去形のない助動詞must, need (not), ought to, had better, shouldなどは、そのまま用いる。ただし、mustが「〜ねばならぬ」の意味のとき、had toとすることもある。

She said she must go home.(彼女は帰らなくてはと言った)

He knew that the rumor must be true.(彼はうわさが本当に違いないことを知っていた)

Father said I need not go.(お前は行かなくていいよと父が言った)

22-2. 話法(1)

22-2-1. 直接話法と間接話法

話法は調節話法と間接話法の2種類があります。

直接話法 He said(伝達動詞), “I was busy(被伝達文).”(彼は「僕は忙しかった」と言った)
間接話法 He said(伝達動詞) that he had been busy(被伝達文).”(彼は忙しかったと言った)
被伝達文の時制は過去形から過去完了形になる。

22-2-2. 話法の転換 直接⇄間接

22-2-2-1. 平叙文の場合

He said, “We are very late.”
⇒ He said [that] they were very late.

① 接続詞thatは間接話法の印である。普通は省略される。


② 彼が「我々」と言ったのだから「彼ら」となる。


③ 時制の一致を受ける。

She said to me, “They don’t know you.”
⇒ She told me [that] they didn’t know me.

① said to me → told me


② 彼女が「彼ら」と言ったのは、話し手にとっても「彼ら」となる。


③ 時制の一致を受ける。


④ 彼女が「あなた」と言っているのは「私」のこと。

22-2-2-2. 疑問文の場合

I said to him, “Where have you been?”
⇒ I asked him where he had been.

① said to him → asked him


② 疑問詞がそのままつなぎになる。


③ 時制の一致を受ける。


④ 私が「彼に」対して「あなた」と言ったのだから「彼」

⑤ 疑問詞のあとは平叙文の語順(S’+V’)となる。


⑥ 疑問符はとる。
He said to her, “Did you see my book?”
⇒ He asked her if she had seen his book.

① said to her → asked her


② 疑問詞がなければif (whether)でつなぐ。


③ 彼が「彼女」に「あなた」と言っているので「彼女」。


④ 時制の一致を受ける。

⑤ 彼が「私の、自分の」と言ったのだから「彼の」

⑥ 疑問詞のあとは平叙文の語順(S’+V’)となる。

⑦ 疑問符はとる。

直接話法の伝達動詞が文尾や文中にある場合

直接話法で伝達動詞が文尾や文中にあることが多いが、そのときは文頭に置き換えて考えればよい。

“The teacher,” she said, “didn’t like my son.” → She said that the teacher hadn’t liked her son. (先生は私の息子が好きではなかった、と彼女は言った)
疑問文や直接話法で伝達動詞がaskなど「尋ねる」意味のものやknowになっている場合は、間接話法にもその動詞をそのまま使う。

She asked me, “Do you want it?” → She asked me if I wanted it.(彼女は私にそれが欲しいかどうか尋ねた)

“Why did you do that?” he wanted to know. → He wanted to know why I had done that.(なぜ私がそれをやったのか彼は知りたがった)

22-2-2-3. 命令文の場合

I said to him, “Copy the sentence.”→I told him to copy the sentence.

said to him→told him

「命令」のとき、伝達動詞はtell, order, commandなどにする。

被伝達文はto不定詞にする。
The doctor said to me, “You must stay in bed.”

The doctor advised me to stay in bed.

said to me→advised me

勧告、忠告のとき、伝達動詞はadvise, warn(警告する)などにする。

被伝達文はto不定詞にする。

“You must stay〜”は文意から命令文として考える。
She said to me, “Please don’t say that again.”

She asked me not to say that again.

said to me→advised me

被伝達文はto不定詞にする。

notのような否定語はto不定詞の前に置く。

22-2-2-4. 命令文の伝達文がthat節になる場合

被伝達文が「勧告・忠告」の意味を表すとき、間接話法でこれをthat節にすることもあります。

The doctor advised [me] that I must stay in bed.

22-2-2-5. 感嘆文の場合

He said, “How lucky she is!”

He cried out how lucky she was.

① said→cried out, 伝達動詞はcry (out) やexclaimなど

② 被伝達文の語順はそのまま。

③ 時制の一致を受ける。

感嘆文にはいろいろな間投詞が含まれていたり、時には間投詞や動詞1語だけであったりすることが多いので、被伝達文の内容を汲み取って表現します。

“Help!” cried the drowning boy.→The drowning boy cried for help.(救助を求めて叫んだ)

祈願を表す文の場合

祈願を表す文は伝達動詞をwishにして、被伝達文の内容を不定詞で表わします。

I said to her, “May you be happy.”→I wished her to be happy.(私は彼女にどうぞお幸せにと言った)

感嘆文にはいろいろな間投詞が含まれていたり、時には間投詞や動詞1語だけであったりすることが多いので、被伝達文の内容を汲み取って表現します。

“Help!” cried the drowning boy.→The drowning boy cried for help.(救助を求めて叫んだ)

Let’s〜の時は?

Let’s〜「勧誘」や、Would you please〜?「依頼」のときはどうしたらよいでしょうか。
Let’s〜の時は伝達動詞を「suggest [propose] to+人」にして、被伝達文をthat〜 (should) …で述べます。

(a) They said to me, “Let’s have a swim.”

→ They suggested to me that we (should) have a swim.<仮定法現在>
(b) “Would you please show me the way? he said to me.”→He asked me to show him the way.

(b)の場合、被伝達文を…if I would show〜とif節にしてもよいです。


22-3. 話法(2)

22-3-1. 副詞などの変化

間接話法は、ある人の発言を時間が経ってから、別の場所で他の人に伝えるものであることが多いです。したがって、間接話法では代名詞の人称のほかに時と場所の副詞なども必要に応じて変えなくてはなりません。

22-3-2. 中間(抽出)話法

this→that
now→then
here→there
today→that day
next→the next〜
tomorrow→the next day, the following day
yesterday→the day before, the previous day
last week→the previous week
two years ago→two years before
Paul said, “I found this ball here yesterday.” →Paul said he had found that ball there the day before.

上の例文では、「時」「場所」「ボールの所在」などすべて異なって伝えている文です。しかし場合によっては次のように種々の違った状況が考えられます。

Paul said he had found this ball here the day before.<場所が同じでも時が異なる>
Paul said he found this ball there yesterday.<時が同じでも場所が異なる>
Paul said he found that ball here yesterday.<場所・時は同じでボールの所在が異なる>

ビートルズにThe Night Beforeという曲があります。

The Night Before Treat me like you did the night before

いろいろな被伝達文

1. 被伝達文が2つ以上ある場合

1-a. 平叙文が重なるとき

He said to us, “This snowfall is only the beginning. There will be much more tomorrow.” → He told us (that) that snowfall was only the beginning, adding (that) there would be much more the next day.”(この降雪はほんの手始めで、明日からはもっと降るだろうと彼は言った)
He said to us, “This snowfall is only the beginning. There will be much more tomorrow. Then we can go skiing.” → He told us (that) that snowfall was only the beginning, that there would be much more the next day, and that then they could go skiing.(この降雪はほんの手始めで、明日からはもっと降るだろう、そうなりゃスキーに行けると彼は言った)

1-b. 種類の違う文が重なるとき

I said to my three-year old girl, “I’ll read you an interesting story. Come and sit down here.” → I told my three-year old girl (that) I would read her an interesting story and told her to come and sit down (there).”(3歳の娘に面白いお話を読んであげるから、ここに来てお座りなさいと私は言った)
They said to me, “We’re going to the movies. Would you like to join us?” → They told me (that) they were going to the movies and asked if I would like to join them.(映画を見に行くんだけど一緒に行かない?と彼は言った)

※ 第2、第3の被伝達文のthatは省略できない。

2. 被伝達文が副詞節のある複文の時は、副詞節の中の代名詞、時制、「時、場所」の副詞などを、今までと同じように変える。

They said to him, “Don’t move. Just stay until we come back here.” → They told him not to move but (to) stay until they came back there.(彼らは、戻るまで動かないでじっとしているようにと彼に言った)

22-3-2. 中間(抽出)話法

中間(抽出)話法は直接話法と間接話法の中間的なものである。
中間話法には、だいたい

(1) 人称、時制は間接話法に準ずる。
(2) 疑問文、命令文、感嘆文などの語順は直接話法に准ずる。
という特徴が見られる。

Can you tell me, was there anybody in the car?((事故の目撃者に)車内に誰かいたか教えてくれますか)

cf. 直接:Can you tell me, “Was there anybody in the car?”

cf. 間接:Can you tell me if there was anybody in the car?
Tom had scarcely taken his seat when Jim appeared. His five-year-old sister was tugging. Why in the world had Tom brought the girl here, Jim wondered.(トムが席に着くが早いかジムが現れた。でも5つになる妹がトムのそで口にしがみつくようにしている。何だってトムのやつ妹なんか連れて来たのだろう、とジムは思った)

次は倒置について見てみましょう。

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  • 第5章:冠詞
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  • 第23章:倒置
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  • 第27章:無生物主語
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  • 第36章:お決まりのフレーズ
  • 第37章:教科書と日常の英語
  • 第38章:Beatlesの頻出単語
  • 第39章:英語の咄嗟の一言
  • 第40章:話しかけるフレーズ
  • ビートルズの曲名に基づく索引(a,b,c,…)
  • 英国オリジナルアルバムの発表順に基づく索引
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