第32章 会話表現の発音

会話表現

第32章 英会話表現の発音

英語を話す場合に、かず個々の音を正確に発音するように心掛けることが第一ですが、さらに英語の休止、リズム、抑揚を身につけなければなりません。英語における休止、リズム、抑揚は、相手に正しく意味を伝えるのに不可欠なもので、抑揚が変われば意味も変わってくる場合が多いです。

この章では日常生活における英会話表現の発音に関することについて少し触れています。

32-1. 休止

スピーチやリーディングにおいては、息継ぎをするために適当な箇所で休止し、相手に正しく理解させるために、意味単位により文を区切って発音しなければなりません。このように音が停止することを休止(Pause)といいます。
休止は意味単位のあとに置かれるが、いくつか例を見てみましょう。

The lady sitting over there is Mrs. Brown.(あそこに座っている婦人がブラウン夫人です)<長い主部と述部の間>
He gave me a new English-Japanese dictionary.(彼は私に新しい英和辞典をくれた)<長い直接目的語の前>
They elected him chairman of the meeting.(彼らは彼を会議の議長に選んだ)<長い目的格補語の前>
I don’t know when he will come.(彼がいつ来るか知らない)<文中の節の前>
Mr. Smith, mayor of our city, is in his forties.(私達の市長スミスさんは40代です)<同格語句の前後>
I think it difficult to read through this book in a day.(この本を1日で読み終えるのは難しいと思う)<真目的語の前>
She bought a pound of sugar, a dozen eggs and a loaf of bread.(彼女は1ポンドの砂糖と1ダースの卵とパン1個を買った)<列挙されている単語の間>
Yesterday I saw my best friend.(昨日、私の親友に会った)<文頭の副詞のあと>
I don’t know how to call him.(彼を何と呼んでいいのかわからない)<旬の前>

32-2. 文の強勢

文の中で重要な語には、強勢を置いて発音します。これを文強勢(Sentence Stress)と呼んでいます。文強勢は話者個人の主観や時と場所によって異なることがあり、必ずしも一定していません。しかし、強め方には概ね次のような基本的な法則があります。

32-2-1. 強勢の置かれる語

語は「内容語」(独立して意味を持つ語)と「機能語」(文中で主として相互の関係を示す語)に分けることができます。前者にはふつう文強勢が置かれ、後者には置かれません。

32-2-1-1. 内容語

名詞
動詞
形容詞
副詞
(be, have, doは特別の場合を除き例外)
指示代名詞 this, these, that, those
疑問詞 who, when, what, why, etc.

32-2-1-2. 機能語

冠詞 a, an, the
前置詞 to, of, in, at, etc.
人称代名詞 I, me, he, it, my, his, her, your, etc.
関係代名詞 who, what, which, etc.
接続詞 and, but, that, as, if, etc.
助動詞 will, would, shall, should, can, could, may, etc.

32-2-2. 強形と弱形

文強勢をとらない冠詞、前置詞、代名詞、接続詞、助動詞などの機能語の多くには、発音に強・弱の2つの形があります。特に強調する時は強形で発音されますが、ふつうは弱形が用いられます。次に強形、弱形を持つ語をいくつか挙げてみます。

(強形) (弱形)
a [ei] [ə]
an [ӕn] [ən] [n]
the [ðiː] [ði][ðə][ð]
at [ӕt] [ət]
for 英 [fəː] [fə](子音の前)
[fɔː] [fər](母音の前)
for 米 [fɔːr] [fər]
you [juː] [ju]
him [him] [im]
his [his] [iz]
her 英 [həː] [hə] [əː]
[həːr]
(母音の前)
[əːr] [hər]
(母音の前)
her 米 [həːr] [hər]
your 英 [jɔː] [juə] [ju]
your 米 [juər] [jər]
they [ðei] [ðe]
us [ʌs] [əs, s]
and [ӕnd] [ənd] [nd]
[ən] [n]
as [ӕz] [əz]
but [bʌt] [bət]
or 英 [ɔː] [ɔə] [ə]
or 米 [ɔːr] [ər] [ər]
have(‘ve) [hӕv] [həv] [əv] [v]
has [hӕz] [həz] [əz] [z] [s]
had(‘d) [hӕd] [həd] [əd] [d]
are(‘re) 英 [ɑː] [ɑ] [ə]
米 [ɑːr] [ər]
is(‘s) [iz] [z] [s]
do [duː] [du] [də] [d]
does [dʌz] [dəz] [z] [s]
can [kӕn] [kən] [kn]
could [kud] [kəd]
must [mʌst] [məst] [məs]

32-2-2-1. 母音の発音記号

ӕ 「ア」みたいに口を大きく開けて「エ」と言う。
ɑ 「ア」のように口を大きく開けて「オ」と言う。
ʌ 口をあまり開かずに「ア」と言う。
ə 「エ」という時、舌の力を完全に抜いて発音すると「ア」に近いような音になる。
ɔ [o]より口を大きく開いて「オ」と言う。
ː 長音符:長く発音されたり短く発音されたりする。

32-2-3. リズム

英語の発音は、主として音の強勢が周期的に繰り返されることによって、リズムが構成されます。つまり、文中の強勢と強勢との間をほぼ同じ時間をかけて発音することにより、強勢のリズムが生まれます。

32-2-3-1. リズムの練習

次の2グループの各文には文強勢のマーク(たとえばéのようにeの上のマーク)が付けてあります。(b), (c), (d), (e)の文はその順序に従って、それぞれ前の文よりも多くの音節を含んでいますが、強勢の数は同じです。各文を次の指示に従って読んでみましょう。
(1) 各文を同一時間内に読み終える。
(2) 鉛筆で机をゆっくりと規則的に、拍子をとって叩く。(3拍子)
(3) 拍子に合わせて各文を読む。その場合、強勢のある音節を拍子に合わせて強く発音する。2つの強勢間の弱音節は拍子と拍子の間に全部繰り入れて読む。強形と弱形の区別のある語があれば、なるべく弱形を用いる。
(4) 数回読んでから、次第に拍子を速くしていく。

(a) Cáts éat ráts.
(b) The cáts éat ráts.
(c) The cáts will éat ráts.
(d) The cáts will éat the ráts.
(e) The cáts will have éaten the ráts.

32-2-4. 特別な語に強勢を置く場合

32-2-4-1. 聞き手に注意を払ってもらいたい語

聞き手に注意を払ってもらいたい語に強勢を置くことがあります。この場合には意味が違ってくることがあるので注意が必要です。

次の表の文は強勢を置くところを赤い字で示しています。

(a) He bóught this mera.(「彼はカメラを買った」という普通の言い方)
(b) He bóught thís cámera.(他のカメラではなく「この」カメラを買ったという強調の言い方)
(c) He bóught this cámera.(もらったり借りたりしたのではなく「買った」という強調の言い方)
(d) bóught this mera.(他の人ではなく「彼が」という強調の言い方)

38-2-4-2. 意味の上で対照される語や強調する語

意味の上で対照される語や強調する語には強勢を置くことがあります。

Do you go on fóot or by bús?(歩いていくの、バスで行くの)
I couldn’t go yésterday, but I’m going todáy.(昨日は行けなかったが、今日行きます)
Did you give it to Dad? ー No, I gave it to Móm.(おとうさんにそれをあげたの ー いいえ、お母さんにあげました)
I’ll take thát one, not this one.(あれをいただくわ。これじゃなくて)
Do you have cóffee for breakfast? ー No, I have téa.(朝食にコーヒーを飲みますか ー いいえ、紅茶を飲みます
Why don’t you hurry? ー I ám hurrying.(どうして急がないの ー 急いでいますよ)<旬の前>

32-3. 抑揚

言葉が実際話される時には、その調子が平坦であることは稀で、多かれ少なかれその調子は上昇、下降を繰り返しています。この音の高低を抑揚(Intonation)という。
抑揚は文の強勢と密接な関係を持っていて、ふつう驚いたり、強調したりする場合、その言葉に強勢が置かれると同時に抑揚も高くなります。

ここでは、抑揚を表記するにあたって、高調を置くところを赤色で区分しました。

He sáid he couldn’t héar you.(彼はあなたの言うことが聞こえなかったと言っている)
I’d líke a new r.(私は新しい車が欲しい)

※ 高調はふつう最終の文強勢と一致する
。また、carのように1音節の中に音調のすべりが生ずる時は、母音を比較的長く発音する。

32-3-1. 文末の昇降調

(1) 平叙文
Thís is my fe.(こちらがわたしの妻です)
You haven’t sáid a rd.(あなたは一言も話さなかった)
(2) 命令文
Cóme to sée us.(ぜひおいでください)
(3) 疑問詞のある疑問文(what, who, why, howなどの始まるもの)
Whát is the mátter?(どうしたの)
Whén can you stúdy?(あなたはいつ勉強できるの)

Hów did he me?(or Hów did he me?)(どうやって来たの)
(4) 感嘆文
How wónderful!(何てすばらしい)
(5) 付加疑問文(念を押すとき)
It’s a béautiful day, isn’t it?(しばらしい日じゃありませんか)

32-3-2. 文末の上昇調

(1) Are you háppy?(お幸せですか)
Won’t you réad this for me?(これを読んでくださいませんか)
(2) 呼びかけ
Helló, Jóhn.(こんにちは、ジョン)
(3) 問い返しの文

Bég your párdon?(何ですって?)
(4) 付加疑問文(軽い問いの気持ち)

She didn’t go to schóol, did she?(彼女が学校へ行かなかったって?)

32-3-3. 文中での上昇調

(1) 強調
Whát does shé knów about pólitics?(sheを強調)(彼女が政治について一体何を知っていますか)
(2) 比較対照
You spéak English better than I do.(あなたは私より英語が上手です)
(3) 文中でのコロン, セミコロンの箇所
I’ll téll you the trúth: it can’t be dóne.(真実を話します。それは行われたはずがない)
I sáy he can; sáys he can’t.(私は彼ができると言うが、彼はできないという)
(4) 選択
Will you have mílk or mon?(ミルクにしますか、レモンにしますか)
(5) 列挙する場合(最終の語は昇降調)
I spéak English, Itálian and Frénch.(私は英語、イタリア語、フランス語が話せます)

32-3-4. 抑揚で意味が変わる文

同じ文でも抑揚が異なると意味が変わることがあるので注意が必要です。

(1) I beg your pardon?(失礼をわびて「すみません」)
I beg your pardon?(もい一度おっしゃっていただけますか)
I beg your pardon?(他人に話し掛けたり、自説を主張するときに「失礼ですが…」)
(2) Is that so?(疑いの気持ちをもって「本当にそうですか」)
Is that so?(納得して「そうですか」)
(3) Would you like two or three?(2つと3つとどちらがよろしいですか)
Would you like two or three?(何かをすすめる言い方「少しいかがですか」)
(4) Isn’t it funny?(ふつうの抑揚で「面白くありませんか」)
Isn’t it funny?(感嘆して「面白いじゃない」)
(5) Have a nice trip!(旅に出る人に「快適なご旅行を祈ります」)
Have a nice trip!(旅から戻ってきた人にお帰りなさいぐらいの気持ちで「快適な旅行でしたか」)

32-4. 音の連結(リエゾン)・同化・収縮

実際に英語が話されるとき、一連の語句は互いに影響し合って発音されます。こうした現象に、連結、同化、収縮などがあります。

32-4-1. 連結

子音と母音が並んだとき、音がつながることをリエゾン(liason, 連結)という。

after all
[rɔ]
an hour
[na]
get up
[tʌ]

なお、連結の結果、語の切れ目と音の切れ目が一致しなくなるので注意。

Not at all. [natə tˈɔːl]
Take it easy. [téikitíːzi]
watch and chain [wɔtʃən tʃein]
I’ve heard a lot about him. [aiv həːdə lˈɔtəbautim]
It’s one of the best. [its wənəvðə bést]
Shall we go and eat. [ʃəlwi gˈɔuən díːt]

注意)前の単語がeで終わっている時は、eの1つ前の子音が次の単語の母音と連結することがあります。

time and again [taiməndəgein]
ride or walk [raidɔə wɔːk]

32-4-2. 同化

1つの音がその前後に来る音の影響を受けて、同じ音もしくは類似の音に変化することを同化といいます。

1 相互に影響し合う

Does she? [dəʒʃi]

Did you? [dídzju]

Not yet. [nˈɔtʃjét]
2 あとの音が前の音に影響を与える

ten minutes [n→m]

this shop [s→ʃ]

have to [v→f]
3 前の音があとの音に影響を与える

What’s…? [t→s]

a broken leg [kn→kŋ]

32-4-3. 収縮

音をとばして収縮することがある。これには省略の符号(’)で表わすものと、符号を使わないが収縮するものがあります。

Who’s [huːz]
I’ve [aiv]
you’d [juːd]
Is he…? [iziː]
You’ll have met her [juːləv métə]

32-4-4. 子音の脱落

類似した子音が続く時に、前の子音が脱落して聞こえないことがあります。その脱落した子音のところで一瞬、間を置いて発音するとよいです。

What time big group hope to take care

また、母音が続く時に、その間に、滑らかにするために余分な音を入れることがあります。

May I…? [meijai] They eat it. [ðeijíːtit] Do it. [dúːwit] Go out. [gouwaut]

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