第17章 受動態と能動態

英語の構文と特徴

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第17章 能動態と受動態

同じ事実でも、見方によって別の言い方をすることがあります。「Aが(Bに)〜をする(した)」というように、行為するものを中心に言う能動態に対して、受動態は「Bが(Aに)〜される(された)」というように、行為を受けるものを中心にした言い方です。
英語では、受動態の方が日本語の場合よりも多く、英語の特徴の一つです。

ビートルズなどの洋楽歌詞に特に興味がない方は、下記の引用部分を飛び越えて文法のセクションへ飛んでください。↓

ビートルズの歌詞に出て来る現在完了形の受動態

She Said She Said she’s making me feel like I’ve never been born(彼女は僕をこの世に生まれてきていないような気分にさせてしまう)
The Continuing Story of Bangalow Bill Bill and his elephants were taken by surprise(ビルと彼の象は驚いた)
How Do You Sleep

(John LennonのソロアルバムImagineの中の1曲)
So Sgt. Pepper took you by surprise(サージェントペッパーには驚かされただろう)

ビートルズのLady Madonnaの歌詞に出て来る受動態をハイフンで短くした例

Lady Madonna Did you think that money was heaven-sent? = Did you think that money was sent by heaven?(お金は天からの贈り物とでも思っているのかい)

ビートルズの歌詞に出て来るIt’s understood

Drive My Car “Baby, it’s understood.”(ベイビー、そんなの当たり前でしょ)
Girl She acts as if it’s understood.(彼女はあたかもそんなの当たり前でしょうみたいに振る舞う)
My Love (Paul McCartney) It’s understood.

ビートルズの歌詞に出て来るbe goneの形(受け身の意味ではなく、結果を示す完了形→9-4-1-5. 注意すべき完了形

I Call Your Name Since you’ve been gone(君がいなくなってから)
You Won’t See Me since you’ve been gone(君がいなくなってから)
We Can Work It Out Run a risk of knowing that our love may soon be gone(僕たちの愛が消えてしまうかもしれない経験をするという危険を冒す)
Lucy In The Sky With Diamonds And you’re gone(君の姿はもうない)
Teo Torriatte (Let Us Cling Together)
Queen
When I’m gone(僕がいなくなってしまった時)


17-1. 受動態の形

17-1-1. 受動態と能動態

A dog bit him.<能動態>

He was bitten by a dog.<受動態>
受動態の作り方

① 能動態の目的語が受動態の主語になっている。従って、目的格の代名詞が主格になっている。

② 動詞は「be+過去分詞」の形になる。時制はbe動詞が表す。未来形「will be+過去分詞」, 進行形「be being+過去分詞」, 完了形「have been+過去分詞」, 助動詞を含む場合は「助動詞+be+過去分詞」
This work must be done in a day.(この仕事は1日で終えなければならない)

③ 能動謡の主語は、受動態では「by+名詞」の形で表される。
主語が代名詞の場合は「by+代名詞の目的格」になる。

17-1-2. 受動態と文型

受動態となる動詞は目的語をとる動詞、つまり他動詞です。したがって、受動態の文も他動詞の種類によって3つの文型に分けられます。受動態になると、能動態と文型が変わります。

17-1-2-1. S+V+O⇒S+V

John loves Yoko.(ジョンはヨーコを愛している)→Yoko is loved by John.(ヨーコはジョンに愛されている)

17-1-2-2. S+V+IO+DO⇒S+V+O

He teaches us English.(彼は私達に英語を教える)
→1. English is taught (to) us by him.(英語は彼によって我々に教えられる)
2. We are taught English by him.(我々は彼によって英語を教えられる)

注意1 S+V+IO+DOの文は、いつも2通りの受動態ができるわけではない

sell, read, sing, make, writeなどの動詞は一般に直接目的語(DO)を主語とする受動態を作るが、間接目的語(IO)を主語とする受動態は作れない。

He wrote me a long letter.
→A long letter was written (to) me. I was written a long letter.←不自然な受動態

注意2 S+V+Oでも受動態を作れない動詞がある

I like animals.→Animals are liked….
He had two hens→Two Hens were had…. I see what you mean.→What you mean is seen….ほかに、resemble (似ている), cost(費用がかかる), mind (気にする), など。

17-1-2-3. S+V+O+C⇒S+V+C

They elected me chairman.(彼らは私を議長に選んだ)
→I was elected chairman (by them).(私は(彼らによって)議長に選ばれた)

S+V+O+C(原形不定詞)⇒S+V+C(to不定詞)

動詞が使役動詞make(〜を…させる)や知覚動詞(see, feelなど)の時には、受動態の文では「to不定詞」が用いられます

He made me go there.(彼は私をそこに行かせた)
→I was made to go there [by him].(私は彼にそこに行かされた)
We heard Nancy play the piano.(ナンシーがピアノを弾くのが聞こえた)
→Nancy was heard to play the piano.(ナンシーはピアノを弾いていた)

アメリカのロックグループKISSの曲「I Was Made For Loving」の歌詞は元々受動態のto不定詞と考えることができます(第21章 動名詞 参照)。

KISSの曲「I Was Made For Loving」の文の変換

前置詞 + 動名詞をto不定詞に変える I was made for loving you
使役動詞の受動態ではto不定詞になる I was made to love you
能動態では原形不定詞 You made me love you

The Beatlesの「Run For Your Life」の歌詞ではwould rather V+O+C(原形不定詞) than C(to不定詞)の形の歌詞があります。

The Beatlesの「Run For Your Life」の歌詞のwould rather V+O+C(原形不定詞) than C(to不定詞)

Well, I’d rather see you dead, little girl
Than to be with another man

これは次のようにto不定詞ではない原形不定詞の形が本来の形ではないかと私は考えました。

Well, I’d rather see you dead, little girl
Than to be with another man

しかし、The Beatles のアルバム「Rubber Soul」の最後の曲「Run For Your Life」を聴いてみると「to」が聞こえます。ということは、「to be with another man」は知覚動詞seeの受動態の補語Cではないかと考えました。すると歌詞全体は次のようになって「you are seen」が省略されているのではないかと私は考えました。本当のところはどうなんでしょう?

Well, I’d rather see you dead, little girl
Than (you are seen) to be with another man

17-1-3. 受動態の否定文・疑問文

17-1-3-1. 否定文

be動詞の文と同じく、beのあとにnotを置く。

The ball was not thrown by the child.(ボールはその子供によって投げられたのではない)

17-1-3-2. 疑問文

(1) 一般疑問文 Did Mr. Smith invite you?(スミス氏はあなたを招待しましたか)
Were you invited by Mr. Smith?(あなたはスミス氏に招待されましたか)
(2) 疑問詞のある
疑問文
Who invited you?(誰があなたを招待しましたか)<疑問詞が主語>→By whom were you invited?=Who were you invited by?(誰によってあなたは招待されましたか)
What did Mr. Stevenson do?(スティーブンソン氏は何をしましたか)<疑問詞が目的語>→What was done by Mr. Stevenson?(スティーブンソン氏によって何がなされましたか)
What do you call this animal?(あなたはこの動物を何と呼びますか)<疑問詞が補語>→What is this animal called?(この動物は何と呼ばれますか)

17-2. 「状態」,「動作」を表す受動態

受動態を表す意味には、次の2つがあります。

1. 「〜される」———-「動作」を表す

2. 「〜されている」—–「状態」を表す

次の文は、状態を表す受動態の例です。

(a) The roof is painted green.(屋根は緑色に塗られている)
(b) The door was shut fast.(扉は固く閉ざされていた)
(c) Their houses are built of brick.(彼らの家はレンガ造りです)

この種の受動態は能動態に改めることはできない。例えば上の(c)をThey built their houses of brick.とすることはできない。

「動作」の受動態か、「状態」の受動態か

「動作」の受動態か、「状態」の受動態かは文脈によります。

The roof has just been painted green.(屋根は緑色に塗られたばかりです)
The door was suddenly shut.(扉は突然閉められた)

上のようにすると、「動作」の受動態となって「状態」ではなくなります。つまり、時制や使われる副詞などによって「動作」の受動態となったり「状態」の受動態となったりするから注意が必要である。

「動作」や「状態」の意味をはっきりさせるために、次のようなbe動詞以外の動詞が用いられることが多いです。

become [get] +過去分詞 「動作」の受動態
lie [remain] +過去分詞 「状態」の受動態
They became known to all.(彼らはみんなに知られるようになった)
The boy got injured on his way home from school.(その少年は学校からの帰り道で怪我をした)
The problem remained unsettled.(問題は未解決のままだった)
The matter lay hidden from us.(そのことは隠されたままだった)

17-3. 注意すべき受動態

17-3-1. 群動詞(「動詞+前置詞など」)の受動態

look after〜(〜の面倒を見る), take care of〜(〜の世話をする),など、他動詞の働きをする群動詞の受動態は、動詞だけを変化させて下記の形をとります。

be+過去分詞+前置詞など

前置詞を忘れないように注意します。

Somebody else must look after the baby.→The baby must be looked after by somebody else.(誰か他の人が赤ちゃんの世話をしなければならない)
The custom must be done away with.(その習慣は廃止されなければならない)
We should take great care of the child.→The child should be taken great care of.(その子は十分気をつけて世話をしなければならない)

注意)「動詞+名詞+前置詞」タイプの群動詞の場合、この名詞が受動態の主語となることがあります。名詞に修飾語の付く場合が多いです。Great care should be taken of the child.

17-3-2. They say that…「…だそうだ」,「といわれている」の受動態

このような文ではthat節を主語にする代わりに、仮主語Itを使います。

They say that… → It is said that…
They say that our teacher will be at the meeting.→It is said that our teacher will be at the meeting.(先生がその会に出られるという話だ)
I’ve got a word or two

これと同じ形をとる受動態表現に次のようなものがあります。

It is thought (believed, supposed, expected, etc.) that…

現代英語、特に、新聞、雑誌などではこれらを、(1) that節の中の主語を中心として、(2) Vはそのまま引き継ぎ、(3) that節内の動詞を不定詞化するという手順で次のように表すことが多いです。

It is said that our teacher will be at the meeting.→Our teacher is said to be at the meeting.
It was believed that he was speaking the truth.→He was believed to be soeaking the truth.(彼は本当のことを話していると思われた)

注意)that節の時制が文全体の時制より前の時制の場合、「to+have+過去分詞」になります。

It is said that the dirty man was really a rich man.→The dirty man is said to have really been a rich man.(その汚れた男は実は金持ちだったそうだ)

It seems that he〜.→He seems to〜.

受動態ではないが、It seems that 〜.のような表現にもこのような仕方が適用されます。

It seems that he is [was] rich. → He sems to be [to have been] rich.(彼は金持ちの[だった]ように思われる)

be supposed to〜のいろいろ

1 He is supposed to be somewhere in England.(彼はイングランドのどこかにいるものと考えられる)<最も普通の用法>
※ George Harrisonのソロアルバムに「Somewhere in England」というのがあります。
2 He is supposed to be in his office now.(彼は勤め先にいることになっています(が実はサボッている))<表向きはそうだが実は違うことを示す>
3 He is supposed to do the room.(彼が、その部屋を掃除する役目になっている)<ある役目を担っていることを示す>
4 be not supposed to は婉曲な禁止。

You are not supposed to smoke in this room.(この部屋では禁煙になっている)

17-4. 受動態の表現

17-4-1. 行為者(by〜)を示さない受動態

A glass was broken.(コップが割られた)

一般には下記のようになります。

17-4-1-1. 動作主がwe, you, they(一般の人)の時

The stars are seen only at night.(星は夜にしか見えない)
The whole job will be completed in one day.(仕事は1日で全部仕上げられるでしょう)

上の文を能動態にすると、We see the stars only at night. They will complete the whole job in one day.となります。

17-4-1-2. 動作主が不明の時

The eyes of the guests were all fixed upon me.(お客の目はみんな私に注がれていた)
My aunt was injured in a car accident last year.(おばは昨年車の事故でけがをした)

上の例のような場合には、これに対応する能動態は考えられません。

17-4-2. 受動態が多く使われる場面

受動態は「行為者」よりも、行われる「行為」を中心に述べる表現だから、客観的な記述や描画に適しています。従って、次のような場合には受動態が多く使われます。ただし、日本語に訳す時は必ずしも受動態ではありません。

17-4-2-1. 科学的事象や機械などの働きの説明

Liquid can be made into gas when it is heated.(液体は加熱されると気化する)<科学的事象>
As the piston is forced down in the cylinder, the crankshaft is turned.(ピストンでシリンダー内で下がると、クランク軸が回転する)<機械の働きの説明>

17-4-2-2. ニュースなどの報道

A man was knocked down by a car on Central Street yesterday.(昨日中央通りで男の人が車にはねられた)
The suspect was arrested on the scene.(容疑者は現場で逮捕された)

17-4-2-3. 行為の対象に関心が置かれる時

His house was hit by lightning.(彼の家は落雷に遭った)
The mouth is not used in playing a certain kind of Irish pipes.(ある種のアイルランド式笛を演奏する際に口は使わない)

17-4-2-4. 書き出しの主語が後の方で動作の受け手になる時

He spoke and was applauded by the audience.(彼は話をし、聴衆の喝采を受けた)
We entered the Eiheiji temple grounds and were met by a little monk with a black kimono and a bald head.(私達は永平寺の庭へ入ると黒衣剃髪の小柄な僧侶に出会った)

17-4-3. 英語と日本語の態

日本語では能動態でいうところを英語では受動態で表すことがある。この場合、by〜ではなく、at [with] 〜 や不定詞になる場合が多いです。

17-4-3-1. 「感情・心理」を表す動詞

I am disappointed in you.(あなたには失望した)
He was surprised to hear [at] the news.(彼は知らせを聞いて驚いた)
The baby was amused with the new toy.(赤ん坊は新しいおもちゃを喜んだ)
We were satisfied with his service.(我々は彼のもてなしに満足した)
Nobody is convinced of his honesty.(誰も彼が正直だと確信するものはいない)
I am interested in history.(私は歴史に興味がある)

ほかに、be shocked (at) ((〜に)びっくりする、ショックを受ける), be pleased (at, with〜)(〜を喜ぶ, 〜が気に入る), be annoyed (with, at, about〜)((〜に)腹が立つ), など

「感情」を表す動詞でgetを使う場合

「感情」を表す動詞の場合、beの代わりにgetを使って動作の意味をはっきり表すことが多いです。

He was getting more and more annoyed.(彼はだんだん苛立ってきた)

17-4-3-2. 被害を表す動詞

My dream were destroyed by the failure.(私の夢はその失敗のため砕けた)
Her son was killed in World War II.(彼女の息子は第二次世界大戦で戦死した)

hかに、be flooded (氾濫する), be suspended ((交通機関などが)不便になる), be derailed (脱線する)などがある。

17-4-3-3. その他

He is absorbed in his painting.(彼は夢中で絵を描いている)
I am tired from walking.(歩きくたびれた)
People were filled with real happiness when the war ended.(戦争が終わった時人々は本当に幸福感に満ちていた)
The speech was followed by music.(スピーチの次は音楽だった)
This is based on the principle.(これはその原理に基づいている)

日本語の発想と表現の違い

日本語における受動態の本来の表現は、主に「隣りに家を建てられた」のように「迷惑」を表したり、「不便」を表したりします。ところがこれに対応する英語表現は受動態でなく、「have+目的語+過去分詞」という形を用います。口語ではhaveをgetにすることがあります。また、過去分詞を強く発音します。

I had a house built next to mine.(隣りに家を建てられた)
She had her car badly damaged.(愛車をひどく壊された)
He got his arm broken in the accident.(彼はその事故で片腕を折られた(片腕を骨折した))

次は仮定法について見てみましょう。

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