第25章 英文における省略

英語の構文と特徴

第25章 英文における省略

前後の関係で書き表さなくてもわかる場合、その部分が省略されたり、慣用的に文の一部が省略されたりすることがあります。第25章では、それらを見て行きましょう。

なお、以下の文では省略可能な部分は ( ) で示してあります。

ビートルズなどの洋楽歌詞に特に興味がない方は、下記の引用部分を飛び越えて文法のセクションへジャンプすることもできます。↓

ビートルズの歌詞に出て来る省略

Now And Then Now and then, I miss you
時々、君が恋しくなる
Oh, now and then, I want you to be there for me
時々、君にそばにいてほしい(って思うんだ)
(I) Always (want you) to return to me
いつでも僕の所に戻ってきてほしい(って思うんだ)
I Will If you want me to, I will(君がそうしてほしいなら、僕は待つよ)
All You Need Is Love All you need is (to) love(欲しいのは愛(する事)だけ)
Love You To If you want me to(君がそうしてほしいなら)
In My Life There are places I remember all my life, though some (places) have changed.

Some (places have changed) forever, (and some places have changed) not for (the) better.
cf. change for the better)

Some (places) have (sadly) gone and some (places thankfully) remain.

和訳:

一生記憶に残る場所がある。すっかり変わってしまった場所もあるけれども。

すっかり変わってしまって永久に戻らない場所もあれば、必ずしも良くはなっていない場所もある。

(残念ながら)なくなった場所もあれば、(ありがたいことに)残っている場所もある。

歌詞の最後の4行の解釈について:

“stop and think about them”は「立ち止まって彼らのことを考える」という意味であると考えられます。今まさに歩き続けている中では君の事しか考えられないけれども、僕に関わった人々や起こった出来事に対する愛情は決して失せることはないので、時々立ち止まった時にじっくり考えることにするよ」という意味だと考えられます。つまり、「彼らの事をずっとは考えられない、君のことを考えるから」「僕の人生の中で、それ以上に(何よりも)君を愛していく。(彼らより)もっと」という感じではないでしょうか。このような解釈は接続詞ButやThoughの存在による文脈とも矛盾しません。think aboutはthink ofより時間をかけてじっくり考える感じと考えられます。
P.S. I Love You As I write this letter (I) send my love to you(手紙を書きながら君に愛を送るよ)
Ask Me Why (If you) Ask me why, I’ll say I love you(もし理由を訊かれたら、君を愛しているからと言うつもりだ)
もし原文のI’llの前にandが入っていたら命令形として捉えることもできそうですが・・・(「理由を訊いてよ。そしたら僕は『君を愛している』と言うだろう」)。
Got To Get You
Into My Life
(I’ve) Got To Get You Into My Life(君を僕の人生に取り入れなければならない)
Nowhere Man (He) Doesn’t have a point of view(彼は見解を持たない)
Nowhere Man Knows not where he’s going to(自分がどこへ行くのかわからない)
She Loves You It’s you (who [whom]) she’s thinking of.(= It’s you of whom she’s thinking.)(彼女が思っているのは君だ)(12-3-1.参照)
Day Tripper (I’ve) Got a good reason(いい理由を持っている)
Dr. Robert Ring my friend, I said you’d (better) call, Dr. Robert(僕の友達に電話をかけろ。君はドクターロバートに電話した方がいい)
Help Help me (to) get my feet back on the ground(もう一度きちんとした生活を送る手助けをしてほしい)(19-3-1-3.参照)
For No One No sign of love behind the tears (which are) cried for no one(誰のためともなく流した涙の裏には愛のサインはない)
From Me To You If there anyting (that) I can do(僕にできることが何かあったら)
Get Back Get back to (the place) where you once belonged(君がかつていたところへ帰れ)
Can’t Buy Me Love (Money) can’t buy me love(お金は僕に愛を買ってくれない)

25-1. 省略

25-1-1. 副詞節中の「主語+be」省略

この省略は、「副詞節の主語」=「主節の主語」の場合に見られる。

The house was sold while (it was) being built.(まだ建築中なのにその家は売られた)
The old man sat still, closing his eyes as if (he was) resigning himself to his fate.(そのおじいさんは運命に任せ切っているかのように、目を閉じてじっとすわっていました)

Don’t speak unless (you are) spoken to.(話しかけられなければ話すな)

25-1-2. ビートルズのFor No OneとWaitに見られる省略

ビートルズの「For No One」と「Wait」曲の中の歌詞にcryの過去分詞があります。

For No One No sign of love behind the tears (which are) cried for no one (by her)
Wait We’ll forget the tears (which) we’ve cried

cryは「泣く」で、自動詞なので過去分詞で使われないようなイメージを勝手に持っていたので、調べてみたところ、She cried tears.(彼女は涙を流して泣いた)というような文が存在することがわかりました。そうすると、She cried tears.を受動態にするとTears are cried (by her).という文も可能です。She cried tears.にfor no oneを付けると、She cried tears for no one.となり、受動態にするとTears are cried for no one (by her).となりそうです。歌詞のNo sign of love behind the tears cried for no oneは、No sign of love behind the tears.とThe tears are cried for no one (by her).を関係代名詞で繋いだものと考えることができます(あるいは、No sign of love behind the tears.とShe cried tears for no one.を繋いで、No sign of love behind the tears she cried for no one.の文でsheが都合により省略された可能性もあるかもしれません)。No sign of love behind the tears which are cried for no one (by her).となり、「関係代名詞+be動詞」は省略できるので、No sign of love behind the tears cried for no one.となります。よって、他動詞cryの過去分詞であると考えれば説明はつきそうです。Waitの場合はWe’ve cried tears.をWe’ll forget the tears.に関係代名詞で繋いでWe’ll forget the tears which we’ve cried.となります。 whichを省略するとWe’ll forget the tears we’ve criedとなります。この場合は受け身ではありません。

25-1-3. ビートルズの「Get Back」という曲の中の歌詞に見られる関係副詞where の前の先行詞の省略

Get Back Get back to (the place) where you once belonged

「前置詞+関係代名詞=関係副詞」という関係はありますが、「前置詞+関係副詞」はありません。なのに、to whereというのは何だかおかしな気がします。これは、関係副詞where の前の先行詞the placeが省略されているとみれば理解できます。

25-1-2. 共通要素の繰り返しを避ける省略

He is taller than I (am tall).(彼の方が私より背が高い)
It is warmer this year than (it was warm) last year.(今年は去年と比べると暖かい)
You may go to the dance, if you want to (go).(もし行きたいならダンスに行ってもよい)
We walked along the railroad tracks to Calwa, and (we walked) along the state way to Malaga.(私達は線路沿いに歩いてキャルワへ行き、さらに州道をマラガまで行った)
In many country towns in Ireland, television was unknown, movies (were) rare, and dance halls (were) confined to the young or unmarried people.(アイルランドの田舎の町では、テレビはまだないし、映画館はめったにない、またダンスホールは若者か独身者に限られていた)
この文では共通要素であるwereが省略されている。

共通語句でも省略できないものがある

「ウサギの耳はロバより長い」

→The ear of a hare are longer than those (=the ear) of a donkey.

比較は対等のもの、すなわち、この例ではウサギの耳とロバの耳とを比較するものだから、共通だといって省略はできない。代名詞thoseで受ける。
the+単数名詞ならthatで受ける。

The climate of Italy is as mild as that [the climate] of Japan.(イタリアの気候は日本と同じくらい温和です)

25-1-3. 慣用的なもの

25-1-3-1. 慣用語句

Put ‘a’ or ‘an’ where (it is) necessary.(必要なところに a か an を入れよ)
Correct errors if (there are) any.(誤りがあれば直せ)

これらは常にif any (at all), where (if) necessaryの形で用いられるので、慣用句として覚えましょう。

25-1-3-2. 会話表現

(I) Thank you.(ありがとうございます)
(I’d like to give you) Many thanks.(どうもありがとう)
(I wish you) A Merry Christmas.(クリスマスおめでとう)
(Let me give you) Conglatuations!(おめでとう)
(May I have) Your name, please?(お名前をどうぞ)

次は名詞構文について見てみましょう。

  • 英語学習トップページ
  • 第1章:文の構造
  • 第2章:5文型
  • 第3章:文の種類
  • 第4章:名詞
  • 第5章:冠詞
  • 第6章:代名詞
  • 第7章:形容詞
  • 第8章:副詞
  • 第9章:動詞
  • 第10章:助動詞
  • 第11章:接続詞
  • 第12章:関係詞
  • 第13章:前置詞
  • 第14章:群動詞
  • 第15章:比較構文
  • 第16章:否定構文
  • 第17章:受動態と能動態
  • 第18章:仮定法
  • 第19章:不定詞
  • 第20章:分詞
  • 第21章:動名詞
  • 第22章:話法
  • 第23章:倒置
  • 第24章:強調
  • 第25章:省略
  • 第26章:名詞構文
  • 第27章:無生物主語
  • 第28章:挿入構文
  • 第29章:英語独特の会話表現
  • 第30章:英会話の決まり文句
  • 第31章:会話表現の特徴
  • 第32章:会話表現の発音
  • 第33章:覚えるべき会話表現
  • 第34章:誤解しやすい会話
  • 第35章:韻を踏んでいる歌詞
  • 第36章:お決まりのフレーズ
  • 第37章:教科書と日常の英語
  • 第38章:Beatlesの頻出単語
  • 第39章:英語の咄嗟の一言
  • 第40章:話しかけるフレーズ
  • ビートルズの曲名に基づく索引(a,b,c,…)
  • 英国オリジナルアルバムの発表順に基づく索引
  • 関連記事

    おすすめ記事

    最近の記事

    1. Whatever gets you through your lifeの意味

    2. Now And Thenの歌詞のstayは状態動詞ではなく動作動詞かという疑問

    3. 2023年に撮影した自然のワンショット動画

    4. There must be more to life than thisの意味を文法的に辿って解釈

    5. 2022年に撮影した自然のワンショット動画

    カテゴリー

    タグ

    TOP